画面の説明

このブログは、左側の投稿欄と右側の情報欄とから成り立っています。

2018年5月12日土曜日

(1235)  無名のものたちに照らされて / 神谷美恵子『生きがいについて』(2) / 100分de名著

 
      最新投稿情報
=====
(K0376)  個人Blog 5月上旬リスト <サイト紹介>
http://kagayakiken.blogspot.jp/2018/05/k0376-blog.html
=====
 
 


第2回 14日放送/16日再放送
  タイトル: 無名のものたちに照らされて
 
Eテレ。
放映は、   月曜日 午後 10:25~10:50
再放送は、  水曜日 午前 05:30~05:55
 及び        午後 00:00~00:25
 


【今回の目次】

(1)  詩人・志樹逸馬との出会い

(2)  自伝としての『生きがいについて』

(3)  「生きがい」を奪われる状況とは

(4)  「なぜ私たちでなくあなたが?」

(5)  自らの使命と出会う

(6)  『生きがいについて』が生まれるまで

(7)  「生血がほとばしり出すような文字で書く」

(8)  個の悩みに潜む「人類の悩み」

(9)  新しいスタイルで書かれた『生きがいについて』




【展開】

(1)  詩人・志樹逸馬との出会い

 志樹逸馬は、ハンセン病を患い、長島愛生園で暮らしていました。ここで彼は、詩人の大江満男に出会い、詩を書くようになります。
===== 引用はじめ
 さて、『生きがいについて』の序文にあたる「はじめに」で神谷は、志樹か記した「ここの生活…かえって生きる味に尊厳さがあり、人間の本質に近づき得る。/将来…人を愛し、己が生命を大切に、ますますなりたい。これは人間の望みだ、目的だ、と思う。」という素朴な、しかし重厚な言葉を引き…
===== 引用おわり
 

(2)  自伝としての『生きがいについて』

===== 引用はじめ
 『生きがいについて』は、神谷美恵子が、真の自己に出会っていく「物語」として読むことができます。この本は、二十世紀日本を代表する思想書ですか、同時に彼女の精神的自伝でもある。
 「物語」というと、奇妙に感じるかもしれません。ここでの「物語」という意味は、人間が作るものではなく、人が生きることによってのみ表現できる何かを指します。さらに、そこには文字だけでは語り尽くせない何かもある。
===== 引用おわり
 

(3)  「生きがい」を奪われる状況とは

===== 引用はじめ
 彼女は「生きがい」を奪われた人間とは、「時間からはじき出された人間」であるといいます。そのような状況においては「過去を思うことはたえがたい苦痛であり、未来は考えるさえおそろしい」と感じ、「現在という時間にも現実性が感じられなくなる」、と述べ…
===== 引用おわり
 

(4)  「なぜ私たちでなくあなたが?」

===== 引用はじめ
『癩者に』 / 『うつわの歌 新版』

なぜ私たちでなくあなたが?
あなたは代って下さったのだ
代って人としてあらゆるものを奪われ
地獄の責苦を悩みぬいて下さったのだ

-----
 「なぜ私たちでなくあなたが?」という認識が、彼女の出発点でした。本来ならば、自分が背負わなければならない何かを、代わりに背負ってくれている人が目の前にいる。どうすれば彼ら彼女らの問題を「わがこと」とすることができるのか、こうした達成し得るはずのない問いに向かって彼女は歩き始めます。
===== 引用おわり
 

(5)  自らの使命と出会う

===== 引用はじめ
 あるとき神谷は、友人たちに、もっと病める人を励ますような言葉を書くように言われる。しかし、彼女にはまったく異なる衝動がある。また、彼女には自分が励ますことくらいで何かが変わるような、そうした人々に出会っているのではないと感じている。さらにいえば、深いところで慰められ、生きることを鼓舞されているのは自分の方だ、という思いすらあったように思われます。
===== 引用おわり

 

(6)  『生きがいについて』が生まれるまで

 ガンを宣告されて
===== 引用はじめ
 いずれにせよ、自分の一生が生きがいあるものであったかどうかという問いは、そのとき、多くのひとの心にひらめくであろう。多くの生きがいが死の接近によってうばわれるとしても、残されたわずかな生きる時間のなかで新しい生き方を採用し、過去の生に新しい意味を賦与することさえありうる。

 このままガンで死んでもいいように、私のカオスをこの本の中で一応克服してまとめることができたらそれでもう私の存在理由は全うした事になりそうな気がする。この苦しみはだから真に甲斐のある苦しみなのだ。
===== 引用おわり
 

(7)  「生血がほとばしり出すような文字で書く」 … 添付図

===== 引用はじめ
 どこまでも一寸切れば私の生血がほとばしり出るような文字、そんな文字で書きたい、私の本は。今度の論文も殆どそんな文字ばかりのつもりなんだけれど、それがどの位の人に感じられるものだろうか。
 体験からにじみ出た思想、生活と密着した思想、しかもその思想を結晶の形でとり出すこと。(『日記・書簡集』)
===== 引用おわり
 

(8)  個の悩みに潜む「人類の悩み」

===== 引用はじめ
 個に起こった出来事を深めること、その道行きこそが、もっとも確実な普遍へと続く旅路になる。この発見が『生きがいについて』を貫いているのです。
===== 引用おわり
 

(9)  新しいスタイルで書かれた『生きがいについて』

===== 引用はじめ
(1)  【論文・論考】この本は、様式としては論文、あるいは論考のように見えます。
(2)  【規格外の論文】しかし、「ある女性」という表現で自分の経験を書くことが、客観的な検証が求められる論文としては規格外であることを、彼女は充分認識していたはずです。
(3)  【文学的】その内実は、同時代の文芸批評を凌駕するほど文学的であり、
(4)  【哲学の書】生の現場を見失いがちな現代思想を根底から批判する哲学の書であり、
(5)  【随想】また、信じることの可能性が随所に書き込まれた人生の道標を豊かに蔵した随想でもあります。
===== 引用おわり
(箇条書きにして、タイトルをつけた)
 
 

<出典>
若松英輔(2018/5)、神谷美恵子『生きがいについて』、100de名著、NHKテキスト(NHK出版)
添付図は、この本からの転載


 

0 件のコメント:

コメントを投稿