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2017年6月6日火曜日

(895) 子どもの勉強と学力 / 子供・若者の文化と教育(6)


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2000年からのいわゆる「ゆとり教育」の実施以降、にわかに注目された学力問題について検討する。「ゆとり教育」の内容、子どもたちの学力低下・学力格差の実態、そして、背景にある子どもたちの「学びからの逃走」の要因について考える。


【目次】

第6章 子どもの勉強と学力

1.   はじめに

2.   学力とは何か

3.   PISAショック - 学力ナショナリズムの陥穽 -

4.   学力低下・格差の検証

5.   勉強離れと格差社会の因果関係

6.   新しい学力観としての「総合的な学習の時間」

7.   まとめ

 

<各論>

1.   はじめに

 本章では、ゆとり教育の導入と学力論争の開始から約10年以上の時間を経て、これまでの議論の経過、特に学力をめぐる調査研究の動向とその内容を批判的に精査しながら紹介し、子どもにとっての学力や学びに関わる今後の課題について考えたい。

 
2.   学力とは何か

 日本の場合、学校で習得される知識の定着度や理解度を点数によって測定される「見える学力」以外にも、それを支える学習意欲・関心・態度や思考力・判断力・表現力など、多様な要素を含めて理解されてきた。

 
3.   PISAショック - 学力ナショナリズムの陥穽 -

 PISA型の学力は、ひとつの課題に対して、唯一の正解ではなく、独創的・探索的・複合的な情報処理を求める問題が多くを占めており、知識の詰め込みだけでは対応が難しい内容で構成されている。この特徴を無視して、国際順位が低下したといって、国力の問題として学力問題を議論する(学力ナショナリズム)のは、的外れである。

 
4.   学力低下・格差の検証

 教育社会学者の刈谷剛彦らの学力調査結果を図6-1に示す。以下の2点が明らかになった。第一に、学力は低下傾向にあり、しかも学力格差が拡大している。第二に、児童・生徒の学力は家庭環境や通塾の有無によって規定されている。

 
5.   勉強離れと格差社会の因果関係

 子どもの勉強離れは確実に進み、しかも学校外で勉強する子どもと勉強しない子どもとの間の格差も広がりつつある。完全学校週5日制により、休日に学習塾への通学を含めた学校外学習時間を確保できるのか、それともテレビやゲーム等に興じて過ごすのかによって、学力格差がより鮮明になった可能性もある。

 
6.   新しい学力観としての「総合的な学習の時間」

 「総合学習」は、基礎学力(旧い学力)の低い子どもたちに疎外感を味合わせる一方、基礎学力の高い子どもたちは「総合学習」に積極的に取り組み、「新しい学力」への意欲が高い。つまり、総合学習は新/旧双方の学力差を広げることになった。

 
7.   まとめ

 完全学校週5日制を温存したまま、授業時間や教育内容を増やしている。授業のスケジュールは過密化し、学校教育を通じて時間をかけて「確かな学力」を身に付ける機会を奪ってしまうのではないか。旧い学力と新しい学力、両方の長所をバランスよくカリキュラムに取り入れていくことが必要である。

 

引用
小林 誠、「第6章 子どもの勉強と学力」
竹内清・岩田弘三編、子供・若者の文化と教育、放送大学教材(2011)
6-1 「中学校・数学」の得点分布

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